2011-01-01から1年間の記事一覧

本谷有希子「ぬるい毒」【B−】

前半の前半は面白かった。練りこまれている。ラストの終わり方も悪くない。ただ前半の後半からは一本調子、メリハリが弱い。比喩も不発なものが多い。これまでの作品以上に間接話法を用いていることは、文学的には高評価。その分フツーの作品に成り下がった…

大江健三郎「晩年様式集」【A−】

これはなかなか凄い作品だと思った。 連載一回目なのだが、これを楽しみに文芸誌を買ってしまいそう。もともと構想されていたと思われる作品に「3・11」がどのように絡んでいくか。「3・11」に対する私見の開陳を冒頭にもってきたのは奏功。場面の移り…

木下古栗「Tシャツ」【C−】

知人から聞いて読んだが、残念ながら期待外れ。 かっちりとした文体で、パロディーを描いている印象。新しさは感じず。文学的な教養はきちんとしているように思う。文学プロパーにはそこそこウケるかもしれない。

芥川龍之介「毛利先生」【C+】

おそらく芥川作品においては失敗作。毛利先生の人物造形にブレを感じた。そもそも回想を安直に用いる冒頭部から乗れなかった。それでも最後まで読ませるのは流石。

石田千「あめりかむら」【C】

ところどころ文章に面白味あり。 ただ内容はありきたりな印象。社会を斜めから見るスタンスは、現代文学の紋切。故人の死を終盤にも絡めるのならもっともっとウェルメイドにしなくてはいけない、少なくともそうすべき作風。