2012-07-01から1ヶ月間の記事一覧

荻世いをら「東武東上線のポルトガル風スープ」【C+】

文体を見る限り成熟した印象。自分のスタイルを持っていることと同時に、この作家のスケールの限界が見える印象。前半は多少面白い部分もあったが、中盤からは読むのが厳しかった。

鈴木善徳「河童日誌」【B-】

着想自体は悪くないんだが、後半にすすむにつれてリアリティー甘し。こういった作品には如何にリアリティーを保持できるかが鍵。日誌的に文章を区切っていくことも、その必然性以上に安易な方に逃げた志の低さ。

藤野可織「にゃあじゃわかんない」【B+】

高度なことをしていることを評価。意味をもたせようとしたわざとらしい文章や元々の文章の精度でひっかかる所は多くあったが、それより試みを高く買いたい気分。

岡本学「架空列車」【B】

リーダブルな作品であり、構成もわかりやすい。ただその分スカスカな印象が拭えず。「手本」として名前を挙げた村上春樹の悪い部分を引き継いでいる印象も。自分の趣味ではない作品だが、地震をある意味正面から論じた作品として、随所に記憶すべきディティ…

広小路尚祈「田園」【C-】

饒舌体というより単に粗い印象。体言止め等の効果も出ておらず、読んでいて少しきつかった。体調の悪い町田康のような印象。

墨谷渉「もし、世界がうすいピンクいろだったら」【C】

いろいろな要素を盛り込んでいるものの、空回り感。主人公のキャラ化が成功しておらず、会社の倒産等の切実さがイマイチ。この作家はSMなどの1テーマで押し切る方が向いており、作品の長さに限界。

小祝百々子「こどもの指につつかれる」【B】

完成度の高い作品だと思った。思ったものの、これは何かの模倣としての完成度の高さであり、独自性は低い。厳密に何か既存の作品というわけではなく、既に裏打ちされている美意識そのものに乗っかっている感。もうすこし根本から書かなければ上滑り。

山下澄人「ギッちょん」【B】

ちぐはぐな文章、構成が、きちんと自分の手法になっている。いわゆるヘタウマ系統の作品だが、かなりこなれている印象。ただそのちぐはぐさが作品のダイナミズムとつながっておらず、読後イマイチ。