2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

戌井昭人「ひっ」【B-】

構成は悪くないと思うのだが無駄な文章多し。芸風というにはやや遠い。急いで書き飛ばした印象も。この作家のウリである情緒はそれなりに感じるものの、もう一押し欲しい所。

丹下健太「顔」【C】

前半は悪くなかったが後半は辛かった。顔が変わるという文学的といえば文学的な題材にリアリティーが負けている。物的証拠という問題に対峙しない等の違和が積算した。

松波太郎「西暦二〇一一」【A-】

伝承と現在が交差したときタイトルが切ない。私が読んだ最近の純文学では傑出。もうすこしだけ長くて良い気もしたが、以前この作家に感じた粗雑はなく、難しい題材を軽やかに描いている。

筒井康隆「役割演技」【B】

富裕パーティーや対比的な後半の描き方も悪くないが、心が高ぶらなかったのは事実。キレの問題か。自分が学生の頃は筒井康隆の新作と聞いただけで心が高ぶったもの。古井とはある意味対照的。

綿矢りさ「人生ゲーム」【B−】

以前はドライブ感がもっとあった気がしたが、理詰めになるとこのような作品になるのだろうか。幼さをコントロールするのは巧く、これはこれでいいのかもという読後。

古井由吉「窓の内」【A−】

冒頭の文章によるものか古井作品にしては読みやすい印象。しかしやはり古井作品。圧巻。二度読み三度読みに耐えうる。この作家が現役で書き続け、その新作を読めることは贅沢なこと。