2014-01-01から1ヶ月間の記事一覧

今村友紀「ジャックを殺せ、」【B−】

大きな視座を狙った結果小さな視座の作品になるという一種の典型の如く感じた作品。志は高いと思う。しかし多くの人に読ませようと意気込む事がかえって作品を狭くさせる事にも陥る。読み辛さという点ではここ数ヶ月で圧倒的だった。波多野作品にも感じたエ…

山下澄人「砂漠ダンス」【B+】

この作家の作風と「砂漠」というものがここまで噛み合うとは。文体・プロット共に粗い箇所が散見されるが、「砂漠」という一つの抽象性の中でうまく消化されているようにも所感。故にこの作家の作家性が強すぎる作品である事が多くのアンチを作るだろうが、…

筒井康隆「ペニスに命中」【B−】

笑いがメインの作品のように判断し、笑いの評価において判断。ほとんど笑えなかった。つんのめった笑いを最初から狙っているという相対的な視点までは確保している様には感じず、確保した所でそもそもどうか。こういう作品は単純に笑いたい。文章の無駄さが…

海猫沢めろん「ニコニコ時給800円」【B−】

出だしは良くどんどん読み進める事が出来たのだが、案の定出だしが良すぎてスタミナ切れの感が否めず。笑いを狙っている姿勢が前傾で途中からそれにも疲れた。軽快なテンポは既視感はあるものの魅力的なので、長さに合わせた計画性がもっとあれば広く読まれ…

山崎ナオコーラ「反人生」【C】

ここ数作はセンスの良さのみで書いている気が。この作品も例にもれず。疾走感がある文章でもないのでただ書き飛ばしている様に所感。昔はもっと描写が光る作家だったと思う。文芸誌は窮屈なのだというメッセージはよく伝わる。

松波太郎「イベリア半島に棲息する生物」【B+】

コンパクトに巧く纏まり過ぎている事がダイナミズムという観点においてかえって難。但し走る動作と言葉がここまで拮抗しているのは高評価。「LIFE」の後にこの作品とは幅を感じる。この作家には先行する類似物を指摘出来ぬ強みがある。その割にあざとさは感…

広小路尚祈「じい」【B−】

この作家の作品は数編読んでいて、同世代でもあり嫌いな作風ではなくリーダブルでもあるのだが、正直それ以上は無い。頑張っては欲しいのだが。もっと振り切れるか、突き抜けるか、抜本的な変化が無い限り、読書の優先順位としてはかなり後回しになる。

波多野陸「アフター・ジャスティフィケイション・オブ・ライフ」【B−】

オリジナリティという観点では評価が高く、独特のテンポがある様に所感。但し今作においては次元の低い設定で発露されているため、今後より大きな設定の中でもこのオリジナリティを出し続ける事が可能か。評価値は敢えて低くしたが、今後が楽しみな作家。