2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」【B+】

この作家なりの決意表明ともなる作品では。 前作以来(とくに長編において)、大衆読者に応じた変化を見せていることは如実である。純文学や詩的要素の強度を弱めつつも、そこには戦略的な指針が見受けられる。今回においては会話が冗長であったり、描写が凡…

今村友紀「クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰」【B】

選評のどこかにもあったように舞城の影響は否めないだろう。舞城の突き抜けた感じは弱い。ただし舞城の作品にいまいち乗れない自分にような読者にとっては、マイルドな好印象。舞城ほどコアファンをつくることはないにしても、広範な評価を得る可能性も。

穂田川洋山「自由高さH」【B】

流麗な文体。様々な物事の固形物を流麗な文体で回遊。いわゆる「世界文学」の系譜も感じる。同時に既視感。勤勉さを感じるため、嫌な既視感ではない。評価の難しい作品ゆえ、最後は「面白さ」基準。

松波太郎「廃車」【A−】

面白かったが才能の塊のみという印象。粗削り。この作家はサッカーのものを読んだことがあるが、勢いはこちら。粗削りだが新人らしい。突然挟まれる事故の場面と長いセリフは爽快。

磯崎憲一郎「肝心の息子」【B+】

アンチ大河小説。ネタの印象は強いが成功。この作家の他作品を読んだが、デビュー作に回帰した方がいいのでは。自分も会社員として賛同する作品もあるが、このデビュー作に比べると凡作。この一作のみでは一発屋の印象。それくらい魅力のある作品だというこ…

大森兄弟「犬はいつも足元にいて」【C+】

文章はうまいというか、推敲に推敲を重ねた文章。共同制作ならではの印象。文章は粗を削った点で評価できるものの、イマジネーションまで削りあった印象が強く、退屈。

北野道夫「逃げ道」【B】

「道連れ」を読んでこの作家のデビュー作が気になり読んでみた。ナンセンスを狙いすぎな印象。その点「道連れ」の方を高く評価するが、一貫したにおいを感じる。やはりデビュー作には作家性が凝縮している。ここから暫く若手作家のデビュー作を読むことにし…