川上未映子「すべて真夜中の恋人たち」【B+】

この作家なりの決意表明ともなる作品では。
前作以来(とくに長編において)、大衆読者に応じた変化を見せていることは如実である。純文学や詩的要素の強度を弱めつつも、そこには戦略的な指針が見受けられる。今回においては会話が冗長であったり、描写が凡庸であったりするが、そういった読みをあらかじめ把握した上での作品であろう。細部は退屈でも全体はきちんと作品たりえている。