今村夏子「あひる」 【B】

既視感の強い作品は評価を低くしているが力量は感じる。なかんずく前半から中盤にかけてのあひるを介した人間模様は丁寧に描けているし、主人公の何とも言えぬ境遇も中盤までは良かった。安易な情緒に陥らせない規律も高かったが、終盤にかけてはガス欠の印象。もっと構成を熟考し推敲を重ねても良かったのでは。弟の登場もあからさま過ぎるし、落とし所を探して彷徨った所感。