2015-10-04から1日間の記事一覧

羽田圭介 「成功者Kのペニスオークション」 【B+】

短い作品だが面白く読了。受賞後一作ということらしい。おそらくこの作者は最初からこういった調子の作品を書きたかったのだと推察。賞を受けて枷が外れた様子。のびのび書いている感じが読者にまで伝わってくるというのは、究極の読後感の様にも。タイトル…

綿矢りさ 「ウォーク・イン・クローゼット」 【C+】

おそらく次の段階への過程にあるのだろうが、この作家初期の詩情に一読三嘆していた身からすると、やはりかなり緩んだ印象。このようなストーリーに堕している様に感じてしまうのは、やはり初期が良すぎたせいか。それでもまた別の高みを目指しているものと…

中野睦夫 「贄のとき」 【B】

カフカ的情緒が混じっている印象。とりあえずカフカを混ぜておけば文学作品たりえるという風潮があるやもしれぬが、この作品はその混ぜ方が巧かった。妙なテンションのムラも感じられ、情緒不安定さがかえって武器にも。しかしやはり既視感はある。題材に憶…

矢部嵩 「処方箋受付」 【B-】

この月の早稲田文学だけ購入。早稲田文学を購入するのは十年以上ぶりか、いやもっとか。中盤にさしかかるくらいまでは比較的面白く読めたのだが、どんどんこの語調に飽き徒労感。シンタクス的問題もあるのかも知れぬ。逆接や比喩等の一々がボディーのように…

星野智幸 「呪文」 【B+】

前作よりもかなり面白く読了。理由は今を以て判然とせぬが、おそらく前回は千夜一夜物語などと銘を打たれて期待しすぎていたのかもしれぬ。今回は筋書きそのものがしっかりとしている中で、その自分が仕立てた筋書きに文章を追従させぬ克己的取り組みが看取…

辻原登 「渡鹿野」 【C+】

ルポ的作品のようにも感じられるくらい読み易いが、作中の強度に意図した緩急とは思えぬムラがあり、完成度は低いと言わざるを得ない。場面の転換も強引で、粗さが目立つが、話としては面白い。