2016-06-18から1日間の記事一覧

日和聡子「虹のかかる行町」 【評価不能】

文体から末広がりを見せる世界観ははっきりとしている割に構成は断片的で、何とも言えない余韻を残す。ただ本作は余りに断片的に感じられ、掴み所がない。掴み所を探すと情報面での粗が散見され、掴み所のないままにしておくと、特に印象の残らない作品に陥…

山田詠美「蛍雪時代」 【C+】

この作家の作品で楽しめるものもあるのだが、今回は悪い部分が出ている印象。ウケを狙いすぎているのか。その姿勢が読者のこちらにまで伝播してきて悪寒に似た感慨。短篇という分量であるのに読了するのが辛かった。波のある作家であることを改めて認識。

保坂和志「地鳴き、小鳥みたいな」 【A−】

題材面でやや楽屋落ちのきらいはありつつ、予備知識がなくても楽しんで読める一篇。佳作だと思う。こちらがそういう一篇をたまたま望んでいたのかもしれず、でもそれを望んでいたたまたまを齎してくれたのがこの一篇のようにも感じさせる味わい深さ。言葉で…

杉本裕孝「花の守」 【B−】

この作者独自とまでは断言できないが、独自と感じさせる世界観の完成度は感じさせる。もっと面白いと感じる読者もきっといるだろう。しかしあまりに入口が狭いように感じられ、一般性は低い。途中まで読み、後は最後の数頁のみを読んだ。それでも全てを読ん…

宮内悠介「半地下」 【B−】

奇天烈な設定ながらリアリティを感じさせるのは、この作者の手腕ゆえだろうか。それでもあまり楽しめなかったのは、文章のせいだろうか。語る人物のイノセント性が高いにもかかわらず、ごつごつして感じられ読み辛い。奇天烈な設定だけを読まされている様に…

戌井昭人「ゼンマイ」 【C+】

だらだらと読めはするし、今回は特に如実に所感するも、やはり物足りない。モロッコという異質な舞台設定がなされているにもかかわらず、そのように感じさせるのだからよっぽどである。それが特異な芸風にまで行き着いているのなら良いのだが、やはり先人達…

荻世いをら「私のような軀」 【B−】

文章自体は硬質でありながら、なかなか読ませはする。但しその硬質さに囚われて、内容面に無駄な細部を描かざるを得なくなっている印象。文学は細部だという原理を叩きつけているように所感し、最後まで読むのは辛かった。自閉的サンプルの一つの提示として…

白岩玄「ヒーロー!」 【C+】

明らかに純文学ではない筆致ではあり、それでも面白く読めれば良いのだが、内容面にも乏しい印象。野ブタ以来の学園ものということで、期待値が過度に上がってしまっていたこともあるだろう。どうしても過去のこの作者の佳作と比較してしまう内容でもあり、…

李龍徳「報われない人間は永遠に報われない」 【B+】

久しぶりに時間がとれたので、覚書をしていこうと思う。 純文学テイストの強い内容構成でありながら、文章自体は軽やかでなかなか読ませる。観念に割く紙幅をもう少し抑えてもらえれば更に楽しめたように思うが、文学に接する誠実な姿勢が随所で垣間見え、内…