2016-06-19から1日間の記事一覧
題材も無論あるのだろうが、現在の日本文学の窮屈さから解放されている印象。題材がこのようなのびやかな語りを呼び込んでいるのかもしれない。異化する必然性を所感。各国を移り行く各々のシーンにも書かれなければいけない必然性を感じさせる。語りののび…
丁寧な筆致で文章が紡ぎだされている印象であり、基礎がしっかりとした力量を感じさせる。但し内容が内容なだけに、人物を模している作者の願望が透けて見える所が惜しい。作品世界は強固である事がかえって別の問題を惹起しているように所感。とは言え、こ…
元々は好きな作家だった事もあり発売するやすぐに読了した。すぐに読了出来るドライブ感のある作品であり、この作者の特徴が筆致からして醸し出されているものの、内容面にはあまり感心しなかった。愚痴を愚痴たらしめない描き方ができる作家であるはずなの…
小説が孕む複合性からして非常に楽しんだ。ジャンル自体を久しぶりに楽しめた所感。やりすぎに感じる箇所もあるが、それも小説の良さに感じさせてしまう。文学を否定する語りが私小説の変化球なので、改めて私小説の面白さを認識できてしまう奇怪な構造でも…
今読まれるべき作品である事は確かである。生物の如き題材の作品であるが、他の時代にも通用しそうな硬質な筆致で書かれている。ジャーナリズム的用語・表現への依拠が散見されているように感じられる事が、どう読まれるか。新聞記事・ルポ・文学作品の間を…
かなり好みは分かれる作品だろうが、私は面白く読んだ。同性且つ世代も近いという事もあるだろうか。女性受けはしなそうな欝然とした作品世界・筆致ではあるが、真摯に題材に向き合っている様に所感。突飛なシーンが多いが、きちんとリアリティがある。何と…
勢いで書き切ろうとしたように所感する作品だが、思いの外早くに失速した印象。勢いで書き切れるほどに速度感もなく、構成のバランスも悪い。何度も推敲する中で失調したか。選択する一語一語のセンスには時々目を瞠る。
これまでのこの作者の作品とは筆致・内容ともに一線を画しているまさにその過渡にあるような作品。感性に拠り過ぎていない点において新たな読者層を獲得するかもしれない、とは言い条、これまでの読者からすると物足りないだろう。そのちょうど中間点に着地…
この人物だからこそ許される如き作品のように一読して感じるも、読後これでいいのだと思える様な作品。読んでいる時は楽しくはなかった。しかし時代背景は言わずもがな、このような形式である事自体がこの作者にとっての必然性めいたものを所感。余韻が凄い。
作品世界の強度は高く所感するも、閉塞感もあわせて高い。読んでいて何かの煩わしい価値観を強制されているようで辛い。文体と内容が一致していれば常にいいわけではないという小説の難しさを再認識できる作品。だからと言って意図的に破綻させるのとも違う。