三輪太郎 「憂国者たち」 【B+】

面白く読んだ。固有名詞を憚らぬ作品からして賛否を呼びそうな作品だが、その固有名詞をおいてもきちんと文章を以て書き尽くされている。リアリティーもあると思う。しかしこのリアリティーを出すためのこの詰まった感じが、一般読者を、固有名詞の認知の問題をおいて、遠ざけてしまうのだから、文学は改めて難しいと所感する次第。三島研究の状況は知らぬが、三島研究者達の意見も避けては通れぬだろう作品内容ではある。