朝比奈あすか「手のひらの海」【B】

物語としては楽しめた。息子とのゲームを通じてのやりとりに出色のシーンもあるが、シーンとシーンの連結が雑な印象。文体も面白みが薄く、無駄を絞りすぎた感があり、全体の流れを窮屈にしている。純文学を意識した上での文体なのか知れず、ただ主人公格以外の登場人物はなべてステレオタイプである。主人公格を複雑にする為に、周りを単純化するのではなく、その反対にして周りをもっと深くまで追った方が見所が多かった筈。