村上春樹 「職業としての小説家」 【A-】

この作家の作品はさほど楽しめない質なのだが、この本は存分に楽しんだ。この文体の緩さと内容の緩さが噛み合い過ぎていてその点は時々鼻白んだが、概して楽しんだ。自身が小説家として露命を繋ぐ為に日本の文壇を離れた事が赤裸々と書かれており、それは今後小説家になろうとする私にも、十分な指南たりうる。評価が合わなければ、自作を合わせるのではなく、自作が合う場所に行けばいい。その為にはやはり体のタフさが肝要である事を解いている点において、他の小説読本めいた物とは一線を画している。