山下澄人「しんせかい」 【B+】

後半の中頃までは楽しく読めた。ユートピアともディストピアとも言えぬ様な世界がくっきりと現れ、興味深い。この作家の新境地とも読めるが、これまでよりくっきりとしている分シーンの移行の凹凸等の弱点が随所に散見。具体的世界の物語の終え方への逡巡も見え、終盤に締りがなく、拙さが拙いままに所感。この作家ならではの拙さの芸が見たかった。